巻頭言
カヘキシア
中里 雅光
1
1宮崎大学医学部神経呼吸内分泌代謝内科
pp.1085
発行日 2010年11月15日
Published Date 2010/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101578
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ヒポクラテスの時代から,カヘキシアと呼ばれる特徴的な全身の衰弱状態が,慢性進行期の心不全や呼吸不全で起こることが知られていた.カヘキシアは,ギリシャ語のkakos(悪い)とhexia(状態)に由来している.カヘキシアでは体重減少,筋肉量低下,全身臓器の機能低下,眼瞼や下腿の浮腫,貧血による特有の黄色を帯びた蒼白色で乾燥や色素沈着を伴う皮膚所見などが認められる.カヘキシアの定義として,しばしば「6カ月以内に7.5%を越える体重減少を来す状態」とされているが,単なる体重減少だけでは飢餓と区別できず,明確な定義付けがなされていないこともカヘキシアを臨床的に理解するうえで困難な要因の一つとなっている.最近では,体重よりも筋肉量がカヘキシアの予後を正確に反映することも明らかにされている.また癌死の約25%は,カヘキシアが死因となると報告されている.
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