ズームアップ
AWGCによるアジア人向けカヘキシア(悪液質)の診断基準
小西 正紹
1
Masaaki Konishi
1
1横浜市立大学附属病院 循環器内科
pp.219-224
発行日 2024年2月1日
Published Date 2024/2/1
DOI https://doi.org/10.32118/cn144020219
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Summary
がん,心不全などの慢性疾患を有する患者ではしばしばタンパク同化(体内での利用,筋肉の合成)に対する抵抗性とエネルギー消費の亢進が起こり,このような代謝障害は一般にカヘキシア(悪液質)と呼ばれている.いままで用いられてきたカヘキシアの診断基準は欧米人を基準にしており,体格が異なるアジア人には当てはまらない可能性がある.アジアカヘキシアワーキンググループ(Asian Working Group for Cachexia:AWGC)は,アジア各国のカヘキシアを対象に臨床,研究に携わっている専門家で構成され,3回のデルファイラウンドと5回の会議の結果,①慢性疾患の存在と,②体重減少または低body mass index(BMI)を必須とし,③食欲不振,握力低下(男性で28 kg未満,女性で18 kg未満),CRPの上昇[5 mg/L(0.5 mg/dL)またはそれ以上]の3項目のうち少なくとも1つを満たす場合にカヘキシアと診断する,という基準が提案された1).体重減少のカットオフ値は3~6カ月の間に2%を超える減少が,低BMIのカットオフ値は21 kg/m2が暫定的に提案された.重要な臨床アウトカムとして,死亡,生活の質(QOL),生活機能状態が設定された.AWGCのコンセンサスは,アジア人の集団に合わせてカヘキシアを包括的に定義し,使いやすい診断基準を提供することで,今後の研究やカヘキシアに対する集学的アプローチの発展につながるだろう.将来的にはカヘキシアの治療,予防,ケアのためのガイドライン策定へも発展し,将来の診断基準の改良につながることが期待される.
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