Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
心不全とNPPVをめぐる最近1年間の話題
急性心原性肺水腫をはじめとする急性心不全の呼吸管理において,気管挿管を行わず,マスクを用いるNPPV(noninvasive positive pressure ventilation:非侵襲的陽圧呼吸換気)が,有効な治療手段として広く普及してきた.NPPVを積極的に用いることで,肺酸素化能の早期の改善,気管挿管の回避,集中治療室滞在日数の減少がみられ,死亡率が減少することが,小規模ながら多数の無作為割付試験で実証され,メタ解析によって確認されている1~4).NPPVの有効性のエビデンスが増加するなか,各学会のガイドラインでは心原性肺水腫に対するNPPVの積極的な使用を推奨している.日本呼吸器学会NPPVガイドラインではエビデンスレベルⅠ・推奨度Aであり5),日本循環器学会の急性心不全治療ガイドライン(2006年改訂版)においてもクラスⅡaに位置付けられている6).しかしその一方で,2008年にNew England Journal of Medicineに掲載された前向き無作為割付試験(3CPO)において,NPPVの生命予後の改善効果を否定する内容の報告がなされた7).最新かつ最も大規模な試験であったため,大きな波紋を呼んでいる.ヨーロッパ心臓病学会の急性心不全におけるガイドライン2005では,NPPVを強く推奨していたが,2008年に改定された急性・慢性心不全の診断と治療ガイドラインでは,この試験の結果を踏まえ,推奨度はⅡaとしながらも,エビデンスレベルはAからBに変更となった8).しかしながら,後述するが,この試験にはいくつかの問題点があることを知っておく必要がある.
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.