Japanese
English
綜説
iPS細胞と呼吸器疾患
Induced Pluripotent Stem Cells in Lung Disease
星野 勇馬
1
Yuma Hoshino
1
1京都大学医学部付属病院呼吸器内科
1Department of Respiratory Medicine, Kyoto University Hospital
pp.925-929
発行日 2010年9月15日
Published Date 2010/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101545
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はじめに
2006年に山中らによって誘導多能性幹細胞(iPS細胞)の報告がなされて以来,ES細胞で培われてきた幹細胞研究がさらに加速化されている.iPS細胞は,皮膚線維芽細胞などの体細胞に,3種または4種の遺伝子を導入することでリプログラミングされたES細胞に極めて近い多能性,自己複製能を持つ細胞である.理論上どの個体からも,自己の任意の細胞種を作ることが可能であり,再生医療の観点からは拒絶の心配がなく,また体性幹細胞に比べ体外で十分に細胞を増やすのが容易である.一方疾患iPS細胞は,疾患の病態解明にも利用可能と言われている.すなわち,疾患症例由来のiPS細胞を,病態の責任細胞に分化し,必要に応じて病態発症の引き金となる環境因子を付加し,疾患特異的な表現型を検出するという方法である.こういった発想のもと,様々な疾患iPS細胞が蓄積され,実際,単一遺伝子の異常に伴う神経筋疾患では,疾患特異的な細胞の表現型が実証されている.明らかな遺伝素因が同定されておらず,環境因子によるところの大きい多くの呼吸器疾患にも応用しうるかは今後の検討が待たれる.
本稿では主にES細胞や体性幹細胞を用いた報告を総括し,iPS細胞活用の展望に言及する.
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