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はじめに
呼吸器疾患に対して使用される薬剤は多種,多岐にわたるが,そのなかでも近年の肺癌患者の増加,分子標的薬を含む新規抗癌剤の開発,外来化学療法への移行などから肺癌薬物療法におけるリスク管理がより一層重要視されている.そこで,本稿では肺癌に対する薬物療法のリスク管理に焦点を絞って述べることとする.
これまでの肺癌化学療法の標準治療はプラチナ製剤と第3世代抗癌剤の2剤併用療法であったが,細胞傷害性抗癌剤に加えて,近年特定の分子をターゲットにした分子標的薬が続々と開発され期待されている.具体的には,上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤であるゲフィチニブ・エルロチニブに加えて,2009年11月からは血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤であるベバシズマブの使用が可能となった.従来の細胞傷害性抗癌剤とはその作用機序・副作用のプロファイルが大きく異なるため,従来の抗癌剤とは異なるリスク管理が必要である.さらに,NK-1受容体拮抗剤であるアプレピタントなど癌薬物療法に伴う有害事象に対処する薬剤も新たに開発,承認されている.癌薬物療法の中心が入院治療から外来治療移行してきている現在,癌薬物療法に伴う有害事象とその対処法を十分に理解し,安全で充実した薬物療法を行う必要がある.ただし,癌薬物療法に関するリスクは,薬物有害事象の他に,①レジメンの選択(患者の全身状態の正確な評価と,エビデンスに基づいたレジメンの選択),患者へのインフォームド・コンセント,②処方(薬剤量の設定,オーダリング),③調剤,④投与,いずれの段階でも生じ,医師,薬剤師,看護師などが緊密に連携して対処することが重要である.これらのリスクマネジメントについて特に注意が必要な外来化学療法に関する当院での取り組みを紹介する.
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