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はじめに
わが国において肺癌死亡率は年々増加し1998年からは悪性新生物のなかで第1位となり,今後も増加が予想されている.肺癌の85%は非小細胞肺癌であり,治癒が期待できる治療法は外科的切除および根治的放射線治療であるが,大半の症例が局所浸潤や遠隔転移を有する進行期に発見されるため化学療法を中心とした治療が行われる.近年,新しい抗癌剤および副作用を予防・軽減する補助療法の開発により,進行期肺癌に対しても化学療法の延命が期待できるようになってきたが,その期間はおよそ4~5カ月である.特に遠隔転移を有するIV期症例の予後は不良であるが,肺癌は生物学的にheterogenousであり転移も単一臓器ではなく多臓器にわたって形成することが治療をさらに困難にしている要因であると考えられ,その制御は臨床上重要である.
近年,癌進展に関与する因子に対し選択的に作用するいわゆる分子標的治療薬の創薬が進み,転移を有する進行症例に対する効果も期待されている.標的分子としては,増殖因子やその受容体,シグナル伝達分子,アポトーシス関連分子,浸潤,転移関連分子などを標的とするものが多く(表1),剤型としてはモノクローナル抗体やチロシンキナーゼのリン酸化を阻害する低分子化合物が多い.また,これら分子標的治療薬は標的が明確であるため,抗腫瘍効果を症例ごとに予測する感受性予測システムの開発および個別化医療への応用が期待されている.
本稿では,非小細胞肺癌に対し臨床開発が進んでいる分子標的薬につき上皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬を中心に概説する.また,その効果を高めるための分子標的薬の併用や複数の分子標的を阻害する薬剤についても紹介する.
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