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はじめに
肝疾患を伴う患者が呼吸器症状を訴えることは頻繁にあり,約70%の患者は息切れを訴えるといわれている.呼吸困難の原因は様々であり,特に肝疾患/門脈圧亢進症患者にみられる呼吸困難の原因を表1に要約した1).肝疾患がある状況下で起こる呼吸機能障害は,時には腹水や肝性水胸症が原因であったりするが,同時に肺血管障害を来す主要疾患として肝肺症候群(hepatopulmonary syndrome;HPS)と門脈肺高血圧症(portopulmonary hypertension;PPH)が挙げられ2),両者は混同されることもある3).HPSは,動脈低酸素血症を特徴とするガス交換障害であり,二次性に肺内血管シャントを形成し,一部肝移植が有効であるが著効する薬物治療法はない.一方,PPHは血行動態の問題であり,右心不全を来し,肺動脈圧を下げるのに血管作動薬が使用されてきた.
HPSは,肝疾患,肺血管拡張,酸素化障害(低酸素血症)の三徴を病態として持つ.HPSは,肝疾患でますます認識されており,低酸素血症のカットオフ値の定義にもよるが,肝硬変患者では15~20%にみられ4),肝移植センターからの報告では5~32%ともいわれる5).いずれにせよ今後いかなる慢性肝疾患の患者においても鑑別診断に入れるべきで,特に低酸素血症を呈する患者や,肝機能障害の発症後に呼吸困難が生じているような患者ではそうである.HPSは,進行性の経過をとり,肝移植以外に有効な薬物治療は存在せず,死亡率も高く,保持した肝機能にも影響し,最後は患者のQOLを損なっていくので,早期診断が重要である.本稿では,このようなHPSの診断,病態,治療などを概説する.
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