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特集 コンピュータを用いた呼吸器病態解析の進歩と展望
肺気腫進展の形態学的シミュレーション
Morphological Model Simulations in the Development of Pulmonary Emphysema
平井 豊博
1
Toyohiro Hirai
1
1京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学
1Department of Respiratory Medicine, Graduate School of Medicine, Kyoto University
pp.1229-1236
発行日 2009年12月15日
Published Date 2009/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101383
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はじめに
近年,医学研究において分子生物学的,遺伝子学的な研究が盛んに行われているが,形態学的な研究は,生理学的な研究とともに今なお研究の基本になる重要な視点と考えられる.物の形(形態)を捉える手法としての画像のデジタル化とそれを処理するコンピュータの進歩は画像解析を大きく飛躍させたが,これらの技術を医用画像に応用することによって,医学分野における形態学の発展にも大きく貢献している.
形態学的研究の意義には,疾患の診断(正常と疾患との構造の相違),重症度の診断(構造異常の程度の評価),治療効果の判定(形態異常の治療による改善の程度の評価),病態の解明などが挙げられる.肺気腫を例にとると,肺の構造を反映する胸部CT画像において,肺野低吸収領域は気腫病変の有無を診断する根拠となり,病変の広がり(程度)を評価することによって疾患の重症度を診断したり,治療前後や経年的な変化をみたりすることへも応用ができる.これらの形態学的な考察は臨床研究でもよく用いられているが,さらに詳細に検討することで,病態・病因の解明や予後の予測ができる可能性を秘めており,その手法の一つがシミュレーションと考えられる.上記のデジタル化とコンピュータの進歩は,形態学的パラメータの幅を広げて精度を増し,また複雑・多量な計算を容易にしたことで,古典的な形態学では成し得なかった研究を可能にした.
本稿では,肺気腫の進展様式を胸部CT画像および肺組織画像を用いて形態学的に検討した研究を紹介する.
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