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特集 コンピュータを用いた呼吸器病態解析の進歩と展望
肺呼吸の計算力学シミュレーション
Modelling and Computer Simulation of Respiratory Mechanics
和田 成生
1
,
今井 陽介
2
,
三木 貴仁
2
,
石川 顕一
3
,
鈴木 慎悟
1
,
中村 匡徳
4
Shigeo Wada
1
,
Yosuke Imai
2
,
Takahito Miki
2
,
Kenichi Ishikawa
3
,
Shingo Suzuki
1
,
Masanori Nakamura
4
1大阪大学大学院基礎工学研究科機能創成専攻
2東北大学大学院工学研究科バイオロボティクス専攻
3理化学研究所次世代計算科学研究開発プログラム臓器全身スケール研究開発チーム
4大阪大学臨床医工学融合研究教育センター
1Department of Mechanical Science & Bioengineering, Graduate School of Engineering Science, Osaka University
2Department of Bioengineering & Robotics, Graduate School of Engineering, Tohoku University
3Computational Science Research Program, Organs/Whole Body-Scale Team, Riken
4The Center for Advanced Medical Engineering and Informatics, Osaka University
pp.1219-1227
発行日 2009年12月15日
Published Date 2009/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101382
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はじめに
われわれは,横隔膜の運動により肺を受動的に膨張・収縮させ,外界から酸素を摂取し,体内から炭酸ガスを排出している.気道系は1本の気管から気道が順次分岐し,肺実質の大部分を構成する肺胞に至る構造となっており,肺の膨張・収縮に伴い気道内にガスの流れが生じ,肺胞のガスが外気と交換される.こうした呼吸運動には,気体の流れや肺組織の変形,酸素や炭酸ガスの輸送など,力学原理に支配される現象が含まれており,それらが連成して目的とするガス交換機能が実現されている.したがって,呼吸器系の診断や治療においては,これらの力学現象を把握することが重要である1).
近年,医療用X線CT装置の進歩により,肺内部の詳細な解剖学的構造が非侵襲的に得られるようになってきた2).こうした医用画像と計算力学シミュレーションを統合すれば,直接的には観察できない肺内部の複雑な力学現象を再現し,新たな診断情報を提供できる可能性が高い.例えば,気道系内の流体解析を通じて,気流抵抗に基づいた喘息患者の病態評価が可能となろう.また,吸入薬剤のドラッグデリバリ解析から,薬剤が気道系のどこまで到達し,それがどの程度効果を発揮しているのかを医用画像で得られる形態変化と併せて評価し,患者個別の投薬量の処方に活用することができると考えられる3).力学現象が支配する肺呼吸系の診断や治療においては,こうした計算力学に立脚した解析支援アプローチを導入する効果は大きい.
本稿では,医用画像に基づく肺呼吸の計算力学解析とその臨床応用について述べる.
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