巻頭言
呼吸器病学・免疫アレルギー学の新しい扉をひらく―性差の視点
茆原 順一
1
1秋田大学医学部臨床検査医学
pp.979-980
発行日 2008年10月15日
Published Date 2008/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101127
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呼吸器・アレルギー・免疫学の発展の中にまさに細胞生物学的,分子生物学的な発想によって様々なかたちの切り口が生まれてきているのがみられる.気管支喘息でいえば,よく知られた切り口のひとつは気道の炎症という概念の導入だろう.これが今日の治療の原点となっており,吸入ステロイド薬の普及によって気管支喘息治療は大きな前進を遂げた.現在も治療薬の開発の多くはこの炎症の制御を目的としている.
近年,男性と女性を画一的に扱い診断・治療を行ってきた反省から,Gender-Specific Medicine(性差を考慮した医療)が話題になっている.さらにこのような背景から,社会的な性差(gender)に加え,生物学な性差(sex)を学問として研究し体系づけようとする「性差医学」が注目されている.例えば,膠原病は女性に多く,成人気管支喘息は女性に多いといった性差の原因はまだよくわかっていない.性差の生じる原因は,根本的には染色体の違いが挙げられ,さらにホルモンや解剖学的,精神・神経学的な差異,生活環境などが考えられるが,免疫反応の違いを細胞・分子・シグナルのレベルから解明しようとする試みはほとんどなされてこなかった.
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