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特集 肺高血圧症治療の現状と展望
慢性肺血栓塞栓症
Chronic Pulmonary Thromboembolism
田邉 信宏
1
Nobuhiro Tanabe
1
1千葉大学大学院医学研究院加齢呼吸器病態制御学
1Department of Respirology, Graduate School of Medicine, Chiba University
pp.987-994
発行日 2008年10月15日
Published Date 2008/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101123
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はじめに
慢性肺血栓塞栓症は,器質化した血栓により肺動脈が慢性的に閉塞した疾患の総称である.なかでも,血栓により閉塞した肺動脈の範囲が広く,肺高血圧症を合併し,労作時の息切れなどの臨床症状が認められる慢性血栓塞栓性肺高血圧症が重要である.その臨床経過により,過去に急性肺血栓塞栓症を示唆する症状が認められる反復型と明らかな症状のないまま病態の進行がみられる潜伏型に分けられる.ここで慢性とは,6カ月以上にわたって肺血流分布ならびに肺循環動態の異常が大きく変化しない,とする基準が用いられることが多い1).従来,肺高血圧症の重症例では内科的治療には限界があり,予後不良とされてきたが2),近年,手術(肺血栓内膜摘除術)によりQOLや生命予後の改善が得られる症例が存在するため,その正確な診断と手術適応を考慮した重症度評価が重要である3~5).なお,一般に慢性肺血栓塞栓症は,慢性血栓塞栓性肺高血圧症と同義とされ,厚生労働省が指定する治療給付対象疾患としては特発性慢性肺血栓塞栓症(肺高血圧型)という名称が用いられる.
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