Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
頸動脈エコーをめぐる最近1年間の話題
動脈硬化は小児期より既に出現し,多くの危険因子の関与を受けながら加齢とともに進行する.一部の症例では頸動脈の動脈硬化は徐々に壁の肥厚が進行し高度狭窄・閉塞に至るか,プラークの破綻から血栓形成を来して脳虚血を呈すると考えられる.わが国では2008年4月より頸動脈ステント留置術が保険適用となった.従来の内膜剝離術か,ステント留置術かの適応を判断するのは難しく1),頸動脈狭窄による血流障害の診断,およびプラークの質的画像診断を参考に治療の適応を考えるにあたり,頸動脈エコーの重要性が注目されている.
さらに,複数の前向き追跡研究により,頸動脈硬化を呈する症例はその後局所の閉塞性病変を来し,同側の脳梗塞を発症するよりも,他の血管床の動脈硬化の進行により狭心症,心筋梗塞,対側の脳梗塞,閉塞性動脈硬化症,動脈瘤を発症することが多いことが示されている.すなわち,頸動脈の動脈硬化は全身の動脈硬化進行度の指標として注目すべき病変である.現在,粥状動脈硬化症の治療は,主にその危険因子を指標として行われている.コントロール不良の糖尿病など,強い影響を有する危険因子のみでなく,軽度の動脈硬化危険因子の累積に重要な意味のあることが示され,メタボリック症候群への重点的な対策が行われている.しかし,それらの危険因子が動脈硬化の進展に関与する程度には個人差が大きく,冠動脈疾患症例の40%は正常血圧,正常コレステロール値であるし,家族性コレステロール血症の40%は生涯動脈硬化性疾患の発症をみない.これらのことは,危険因子の診断に加え,実際に患者がどの程度の動脈硬化負荷を負っているかを頸動脈エコー法により評価することが重要であることを示している.心血管疾患リスク層別化に頸動脈エコーを日常臨床で活用しようという考え方はアメリカ心臓協会で2000年に提唱された2).わが国では厚生労働省は2008年4月より40歳以上の成人に特定健康診断を義務化し,血圧測定・血中脂質検査・血糖検査・肥満測定の4項目すべてにおいて異常が認められた場合,二次健診項目として頸動脈エコーを行うことが取り決められた.このため急速に頸動脈エコーが普及しているが,未だその検査法,評価法の標準化に至っておらず,議論のあるところである.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.