Japanese
English
綜説
プロカルシトニンの呼吸器疾患への応用
Application of Procalcitonin for Pulmonary Disease
遠藤 重厚
1
,
佐藤 信博
1
,
鈴木 泰
1
,
小鹿 雅博
1
,
吉川 智宏
1
,
高橋 学
1
,
菊池 哲
1
,
柴田 繁啓
1
,
葛西 健
1
Shigeatsu Endo
1
,
Nobuhiro Sato
1
,
Yasushi Suzuki
1
,
Masahiro Kojika
1
,
Tomohiro Kikkawa
1
,
Gaku Takahashi
1
,
Satoshi Kikuchi
1
,
Shigehiro Shibata
1
,
Takeshi Kasai
1
1岩手医科大学医学部救急医学
1Department of Critical Care Medicine, School of Medicine, Iwate Medical University
pp.597-600
発行日 2008年6月15日
Published Date 2008/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101054
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
プロカルシトニン(procalcitonin;PCT)は,当初は甲状腺髄様癌の診断マーカーとして開発されたが,その他悪性および非悪性疾患患者を調べると,PCT濃度が肺の小細胞癌患者において特に上昇することが認められた.しかし,PCTの研究は一旦凍結された.ところが,1980年代のイラン・イラク戦争においてマスタードガスが使用され,重篤な呼吸障害患者が多数発生したことが報告された.それをうけて,1991年の湾岸戦争の数カ月前に,マスタードガス吸入による重症肺障害の診断マーカーとしてPCT値を測定することの有用性について,Bohuonらとフランス軍医グループが共同研究を開始した.マスタードガス吸入による肺障害の人における臨床モデルとして,気道熱傷を有する熱傷患者を用いた.数カ月の研究後,数名の患者においてこれまで種々の癌患者の研究で観察されたものよりはるかに高濃度のPCT値を示すことを発見した.これらの熱傷患者の病歴を詳細に検討したところ,彼らが重症敗血症および敗血症ショックに罹患していたことが判明したことから,BohuonらはPCTと敗血症との関係について強い興味を持ち,さらに研究を進めた(BRAHMS社との私信).
その結果,PCTを測定することが敗血症の診断に有用であることがわかり,現在広く臨床で用いられるようになってきた.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.