Japanese
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巻頭言
ゲノム医学とシステム医学
Foreward
野出 孝一
1
Koichi Node
1
1佐賀大学医学部循環器内科
pp.235
発行日 2008年3月15日
Published Date 2008/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100998
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これまでの医学研究は,全体から個の医学として,一個体より細胞・遺伝子への細分化の方向へ進んできた.今年ノーベル賞を受賞したノックアウトマウスの研究手法はその一例であるが,一遺伝子をノックアウトした結果,フェノタイプとして異常が出ないのはよくあるケースである.他の遺伝子が代償し,全体として生理機能のバランスを保っているからである.「代償と破綻」はあらゆる疾患の本質であり,その制御システムは複数の細胞・臓器が担っている.国家プロジェクトであるゲノムプロジェクトが終了した後も,疾患の病態解明,診断,治療に革新的な変化は起こっていない.医学研究のアプローチにゲノム解析という有用な方法が追加されたが,ゲノム機能学としてプロテオミクスなどの研究が進展し,今後のゲノム医学と生理学の融合を介してこそ,このプロジェクトの疾患への応用が可能である.
疾病は単一の細胞,臓器で規定されるわけでなく,複数の臓器障害と全身の神経体液性因子のコンプレックス複合体が病態を構成している.また,空間的な三次元の座標軸に,時相が絡む四次元の時空の複合体が疾病の進展に関与している.いわば遺伝子間,細胞間・臓器間の相互作用が多層化された複合ネットワークである.
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