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巻頭言
ゲノム医学によるCOPD病態解明の進歩
Foreward
久保田 功
1
Isao Kubota
1
1山形大学医学部循環・呼吸・腎臓内科学
pp.1297
発行日 2007年12月15日
Published Date 2007/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100940
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従来,病気と遺伝子の係わりというと,家族性高コレステロール血症の原因がLDL受容体の異常であるなど単一遺伝子の障害で発生する病気に限られていました.最近では高血圧や心筋梗塞といったいわゆるcommon diseaseの発症に影響を及ぼす遺伝子が次々と発表されています.しかし,これらpreliminaryな報告の多くは再現性に乏しく,さらに原因とされる変異の疾患発症のodds ratioは1.5前後と決して高くはありません.臨床で役立つ情報は少ないのが現状と思います.
ここでは当教室の柴田陽光講師,高畠典明助教らが見出した慢性閉塞性肺疾患(COPD)の病態と遺伝子に関する画期的研究成果を紹介します.昔から,blue bloater,pink pufferと言われるように,COPDには「やせる人」と「やせない人」の2つの病型があることはよく知られていました.同時に「やせ」は呼吸機能とは独立した予後規定因子であることもよく知られた事実です.しかし,今日まで「やせ」の原因に関しては全くわかっていませんでした.われわれは,「やせ」が,脂肪酸代謝に関連するフォスフォリパーゼA2遺伝子の1カ所のSNPに関連していることを発見しました(AmJRespirCritCareMed,2005).このSNPではCがTとなると,生成されるアミノ酸はグリシンからセリンへと変わります.図はTの有無別に患者さんを2群に分けて,BMI別の人数を示したものです.BMIが20以下の「やせ」の症例のほとんどがTを有することが分かります.
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