Japanese
English
綜説
心腎連関
Cardiorenal Interaction
伊藤 貞嘉
1
Sadayoshi Ito
1
1東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座腎・高血圧・内分泌学分野
1Department of Nephrology, Endocrinology and Vascular Medicine, Tohoku University School of Medicine
pp.891-897
発行日 2007年8月15日
Published Date 2007/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100851
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はじめに
心臓と腎臓は運命の双子であり,一方に障害が起こると他方を巻き込んで,悪循環を形成する.特に腎臓の構造と機能は食塩摂取が困難で,かつ常に飢餓と外敵との戦いがある過酷な環境下での生命維持のために設計されている.その典型をレニン・アンジオテンシン(RA)系にみることができる.RA系は救命救急隊にたとえることができる.すなわち,強力なナトリウム再吸収作用と血管収縮作用は食塩が極端に少ない環境下で外傷を負ったときの循環維持,凝固亢進作用は血管収縮作用とともに止血,増殖や線維化促進作用は創傷治癒,耐糖能などに及ぼす代謝作用は飢餓への対応にそれぞれ必要であった.
然るに現代は食塩とエネルギーの過剰摂取の結果,高血圧,肥満,糖尿病など自然界ではとても考えられない事象が人間社会で起きている.これらの疾患は血管と心臓と腎臓を傷つけ,生体はこれを緊急事態と認識する.その結果,RA系が亢進し,さらに組織傷害が進展することになる.すなわち,心臓と腎臓はお互いを助け合っているつもりが,プログラムが変化していないため,互いを傷つけ合い,死期を早めてしまう宿命の下に生まれた双子といえる.
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