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はじめに
心筋再生に向けた治療戦略は,骨髄単核球細胞や胚性幹(ES)細胞などを用いた細胞移植治療,および造血系血液細胞が産生するサイトカイン治療が主流である(図1).このうち,骨髄単核球細胞はヘテロな細胞集団であり,心筋傷害軽減作用は移植細胞の生着よりも細胞から放出される因子が寄与している可能性が高い(図1*).複数の系譜の細胞から成り立つ心筋組織の修復を考えた場合,多分化能を有する幹細胞は治療のための移植細胞ソースとして理想的である.幹細胞は高い自己複製能と,多くの細胞種に分化することができる多分化能を有する細胞と定義され,胚性幹(ES)細胞,生殖(germinal)幹細胞,組織(tissue-derived)/体性(somatic)/成体(adult)幹細胞に分類される.このうち組織幹細胞は,骨髄の造血幹細胞,肝臓の肝幹細胞,脳の神経幹細胞に代表されるように,成体臓器の長期にわたる修復を担う細胞である.成体の心筋は虚血・心筋梗塞などにより傷害を受けると再生しないことから,臓器特異的な組織幹細胞は存在しないと考えられていたが,近年,成体心臓にも成熟した心筋細胞や血管構成細胞へin vitro,in vivoで分化する特定の細胞分画が存在することが複数報告されている(図1**).このような心臓幹/前駆細胞は,細胞表面マーカーや転写因子によりc-kit陽性細胞,Sca-1陽性細胞,islet1陽性細胞,色素排泄能力により選別されたSide Population(SP)細胞が代表的であるが,それぞれの細胞集団にはいくつかの類似点と相違点が認められる(表1).
本稿では,それぞれの心筋組織幹細胞の特徴,各病態におけるin vivoでの動態と内在性心筋幹細胞を用いた心筋再生治療の可能性について概説する.
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