特集 第23回日本脳神経外科学会・I
シンポジウム:脳細胞機能
細胞内誘導
伊藤 正男
1
1東京大学医学部第2生理
pp.195-200
発行日 1965年3月1日
Published Date 1965/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201790
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I.細胞内誘導による神経細胞研究の発展とその現状
1951年にEcclesらが猫の脊髄運動神経細胞に初めて硝子管徴水電極を刺入してから10余年の年月がたつた.今にして思うと猫の運動neuronを対象として用いたのははなはだ幸運であつたといえる。現在までに他の細胞も数多く研究されてきたが,運動neuronほど微小電極の刺入に長時間安定に耐えるものはないし,またSher—ringtonらにより開発され,Lloydらによりさらに神経および脊髄根からの誘導法を用いて進歩してきた脊髄反射学の知識があつたからである。この優れた反射学を基礎としてはじめて細胞内誘導の諸条件を規定し,誘導される電気現象の解釈を明確に行なうことができた。かくして複雑な神経系内の秘められた存在であつた神経細胞の活動性は一挙に明るみにひきだされ,生理学者にとつてはイカの巨大軸索や筋線維と同列の対象として扱われるまでにいたつた。
今日までに神経細胞の活動性について集積された知識は膨大なものであり,Ecclesの2冊の箸者"The physi—ology of nerve cells"(1957)1)および"The physiology of synapses"(1963)2)によくまとめられている。
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