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再生医療と幹細胞
山崎 英俊
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1三重大学大学院医学系研究科ゲノム再生医学講座幹細胞発生学分野
pp.682
発行日 2010年8月15日
Published Date 2010/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101725
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幹細胞は自己複製能と多分化能をもつ細胞集団と定義され,初期胚(生殖細胞系譜)と体細胞系譜に大別される.前者は1981年にEvansらにより発見された胚性幹細胞(embryonic stem cell:ES細胞)1)で,われわれの体を形成する外,中,内胚葉のすべての細胞系譜に分化可能で,個体形成能も併せ持ち,様々な疾患の治療に利用可能と考えられる(図)2).一方,後者は組織(成体)幹細胞とよばれ,骨髄の造血幹細胞,皮膚上皮幹細胞や脳の神経幹細胞など,様々な組織に存在することが報告されている3).
ES細胞は分化全能性をもつ反面,初期胚を用いるため倫理,他人のES細胞を用いるため拒絶,多分化能による高腫瘍性が大きな問題とされてきた.その点,自己の組織から単離した組織(成体)幹細胞を用いることは,倫理・拒絶の問題を解決できる有効な方法と考えられる.分化能が限局的である点とES細胞のように一度に大量の細胞を準備できない点などの問題はあるが,最近の研究で組織(成体)幹細胞の中には,当該組織を超えた様々な分化能を有する多能性幹細胞も存在することが分かってきた.
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