Japanese
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Current Opinion
非結核性抗酸菌肺感染症―診断と治療
Nontuberculous Pulmonary Infection Diagnosis and Treatment
倉島 篤行
1
Atsuyuki Kurashima
1
1国立療養所東京病院臨床研究部
1Department of Clinical Research Tokyo Hospital
pp.1143-1147
発行日 2003年11月1日
Published Date 2003/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100750
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最近1~2年間の非結核性抗酸菌肺感染症をめぐる全般的話題
全世界的な非結核性抗酸菌肺感染症の実態に関する正確な疫学データは得られておらず,また地域による差異が大きいが,多くの国々で近年増加しているのではないかと推測されている.北米では人口10万人あたり罹患率は0.1~2と推測されている.多くのヨーロッパ諸国では全体に率は北米ほど高くはないが,過去10年間で2~10倍に増加していると推測されている1).オーストラリアでは画像などの臨床情報も含め抗酸菌症の全数調査が行われており,それによれば1959~1968年代では人口10万あたり罹患率は1.8のレベルであったが,1989年には2.7,1997年には4.7まで上昇したとされている2).
わが国では国立療養所非定型抗酸菌症共同研究班が,結核統計とリンクさせた推測値を発表してきたが,1971年には10万あたり0.89であったのが1988年には2.02に上昇し3),1998年から結核と分離して登録されるようになった「結核の統計」では,2001年では非定型抗酸菌陽性での登録患者は4,848名であり,人口10万あたりでは3.8までに達している4).多くの臨床医は,わが国における近年の非結核性抗酸菌症実数は実際には上記の数字より更に増加していると感じているが,それが専らこの疾患自体の認識の広まりや診断技術の向上によるものか,あるいは客観的に疾患自体が増加しているのか,その双方なのかについてはエビデンスが得られていない.
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