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非結核性抗酸菌症対策
本章に与えられたテーマは「非結核性抗酸菌症対策(NTM症対策)」である.「対策」という言葉が呼吸器疾病で用いられることが多いのは「肺がん対策」,「結核対策」など重要な疾患ばかりであり,同症に用いられることはその重要性が認識されたからにほかならない.このためにもブレークスルーに向けた対策を複合的に行っていく必要がある.各対策には目標が設定され,その達成のために時間と資源が集中されるべきである.具体的に挙げるならば①診断対策(早期診断,簡易な診断法),②治療法対策(新薬,現行薬剤での治療効果の向上),③感染予防対策(感染経路遮断,菌・宿主要因の特定と介入)であろう.NTM症は,初期であれば無症状で経過するため検診発見率を上げる努力が必要であり,診断は患者,医療側とも負担が軽減されるように,初期病変でも感度・特異度がともに高い診断法の確立が望まれる.現行標準治療の限界は明らかであり,ニューマクロライドより優れた新薬の開発が期待されるが,それまでは,予後・QOLを改善する治療法(開始,終了のタイミング,補助療法など)を確立していく必要がある.増え続ける有病者数を減らすためにも,感染源の同定と遮断(接触回避,消毒など)に加え,菌病原因子と感染しやすい宿主側因子の特定と介入(菌の特徴の把握,宿主因子の改善)が重要となる.また,上記に加えて登録制のないために実態把握が困難であることから,④常に同症の疫学対策(疫学情報が発信できる体制)が急務と考えられる.
本邦にはNTM症研究の長い歴史がある.疫学では長期的な罹患率調査が続けられ,診断においては現行診断法の根拠となる研究や血清診断法の発見を,治療ではキードラックであるクラリスロマイシンの開発,アミノグリコシドの有用性の証明などである.これらは,上記対策につながるものが多く,われわれの貴重な財産となっている.そして,これら受け継がれているもの,新たに形成されつつあるものを大きな枠組みで支援していくことが各対策強化につながると考えられる.このためにも本邦における研究の歴史経過,および現在の基準となる学会指針とその問題点の認識・周知が重要である.
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