巻頭言
心房細動の治療戦略をめぐって
加藤 貴雄
1
1日本医科大学内科学第1
pp.535
発行日 2003年6月1日
Published Date 2003/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100671
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わが国においても本格的な高齢化社会を迎え,それにつれて心房細動の発生頻度が年々高まってきている.心房細動そのものは決して致死的な不整脈ではないが,特有の症状やそれによるQOLの低下,心不全や脳梗塞の発症など,実際臨床においては極めて大きな問題を抱えている.
以前から,心房細動の管理は内科医の腕の見せ所であった.私が医師になった30年前頃は,心不全を伴った心房細動の患者さんが入院すると,ジギタリスの急速飽和治療を行うのが一般的で,心拍数,呼吸数,脈拍数などを頻回にチェックし,投与量を細かく調節するために,よく泊まり込みで治療に当たったものである.当時は抗不整脈薬としてはキニジンとプロカインアミドぐらいしかなく,心房細動の治療といえばジギタリス製剤を用いた心拍数コントロールが好んで行われた.
その後,ジソピラミドを嚆矢として強力な抗不整脈薬が次々と開発された結果,電気的あるいは薬理学的に除細動を行って洞調律化し,さらにこれらの抗不整脈薬を積極的に用いて洞調律を維持しようという治療,すなわちリズムコントロールの時代が訪れた.特にこの十数年間は,重篤な基礎心疾患のない若年者の発作性心房細動例などを中心に,多くの臨床例でこのリズムコントロール治療が行われている.これによって長期間にわたって洞調律が維持されれば,心房細動特有のさまざまな自覚症状は消失し,さらにQOLの改善,血栓塞栓症リスクの低減など,患者さんにとって多くの福音がもたらされる.
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