Japanese
English
綜説
心不全における心筋カルシウム動態
Calcium Cycling in Heart Failure
矢野 雅文
1
Masafumi Yano
1
1山口大学医学部器官制御医科学講座循環病態内科学
1Department of Molecular Physiology and Medical Bioregulation, Yamaguchi University School of Medicine
pp.67-76
発行日 2003年1月1日
Published Date 2003/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100613
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
心不全は心筋の収縮,弛緩の障害を基盤とする症候群であり,その原因として心筋細胞内Ca2+調節の異常が最近注目されている.なかでも心筋筋小胞体(SR)は,Ca2+動員機構に重要な蛋白質(リアノジン受容体;RyR,Ca2+-ATPase,ホスホランバン,カルセクエストリンなど)を含んでおり,Ca2+動員機構の中心的役割をになう.すなわち,Ca2+の放出はRyRを介して,またCa2+の取り込みはCa2+-ATPaseの働きにより行われる.したがって,心筋細胞内Ca2+調節の異常に占めるSRの役割は大きいと考えられ,SRの機能異常とその構成蛋白質の変化は収縮,拡張障害に直接影響する可能性がある.
近年のめざましい分子生物学の発展により,SRのCa2+調節機構に関与する様々な因子を分子レベルで検討することが可能となり,多くの研究がなされている.特に心筋細胞E-C couplingに対する理解は,最近の数年間で急速に深まり,SRを中心としたCa2+制御機構の異常が,心肥大や心不全の際の代償機構および収縮,拡張不全に大きく関与することが明らかになりつつある.
本稿では,最近の知見をもとに心不全における心筋カルシウム動態をSRのCa2+調節機能異常の観点より考察し,心不全発現機序および新しい治療についても述べる.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.