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特集 カルシウム動態と細胞機能
シナプスのカルシウム動態
Ca2+Dynamics in Synapses
久場 健司
1
,
光本 拓也
2
,
白崎 哲哉
2
Kenji Kuba
1
,
Takuya Mitsumoto
2
,
Tetsuya Shirasaki
2
1名古屋大学医学部第1生理学教室
2佐賀医科大学第2生理学教室
pp.105-114
発行日 1996年4月15日
Published Date 1996/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901069
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シナプスでの化学的伝達は,シナプス前終末へのインパルスの伝導→電位依存性Ca2+チャネルの開口→細胞内遊離Ca2+濃度([Ca2+]i)の上昇→Ca2+の受容蛋白への結合→開口分泌による化学伝達物質の放出→シナプス下膜の伝達物質受容体の活性化→シナプス後電位の発生,の一連の過程で起こる。シナプス後ニューロンで多くの興奮性や抑制性のシナプス入力と修飾性のシナプス入力が統合され,インパルスを発生するか否かまたどのような時系列で発生するかの決定がなされ,神経回路網の情報処理の基礎過程として働くことになる。
[Ca2+]iはシナプス伝達に直接あるいは間接的に不可欠な役割を担っている。シナプス前終末では,Ca2+は電気信号としてのインパルスから化学信号としての伝達物質の開口分泌への不可欠の仲介因子であり,その効率の短期および長期の可塑的な制御因子である。シナプス後ニューロンでは,伝達物質の作用によりシナプス後電位だけでなく,一次的あるいは二次的に[Ca2+]iが上昇する。[Ca2+]iの上昇はシナプス伝達の効率を短期あるいは長期に変化させたり,Ca2+依存性のイオンチャネルの制御を介してインパルス発生のための統合機序や,ニューロン全体の機能と構造の維持のためのエネルギー代謝や遺伝子発現制御に関与する。
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