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はじめに
呼吸管理の方法として,日本において,在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy,HOT)が保険診療上認められて十数年が経過したが,この間,非侵襲的換気療法,特に非侵襲的陽圧換気療法(noninvasive positive pressure ventilation,NPPV)が登場し,高炭酸ガス血症を伴う慢性呼吸不全の呼吸管理の大きな進歩となっており,日本においても急速に普及しつつある.また,慢性呼吸不全の効果より,急性呼吸不全などにもNPPVは試みられている.
NPPVは,マスクを使用するため,会話可能で,試すことができる人工呼吸であり,NPPVに対する患者自身の反応,さらに患者自身の反応に対する条件設定の変更など医療者側の対応が重要となり,すべての患者に可能というわけではなく,不確実な面がある.また,基本的には,患者を説得し,マスクによる陽圧換気を受け入れてもらい,人工呼吸を行うことができるので,パラメディカルのサポートが重要であり,ある程度の教育・訓練を受ければパラメディカルにも可能であるという発展性を有している1).また,図1に示すように,漏れがなければ侵襲的陽圧人工呼吸(invasive positive pressure ventilation,IPPV)と同様の人工呼吸が可能である2).
IPPVは,挿管による気道確保と間欠陽圧人工呼吸器による人工呼吸からなり,挿管に伴う高度の不快感のために,鎮静剤,筋弛緩剤を使用することが多く,患者の反応を抑制し,人工呼吸管理を行う.したがって,人工呼吸の対象患者全例に,ほぼ確実に人工呼吸可能であるが,専門的知識,訓練が必要である.NPPVとIPPVの比較では,IPPVで気道確保に伴う合併症の多い可能性が示唆されている3).したがって,両者の長所・短所,患者の希望を考慮した呼吸管理が必要となる.
NPPVのガイドラインは,呼吸不全の病態により,どのような症例がNPPVの適応となり,あるいはIPPVの適応となるかの問題と,また,NPPVを導入後,どのような条件下でIPPVに移行するかの問題となる.また,IPPVの合併症を少なくするためにIPPV期間を可及的に短くすることが望ましいが,離脱時に関しての条件も必要となる.結局は,現在の呼吸管理方法を再構築することになると思われる.
現在,ガイドラインとしては,イギリス呼吸器学会で急性呼吸不全でのガイドラインが作成されており4),またCOPDに関するガイドラインで,急性増悪時の使用に関してNPPVの適応,IPPVへの移行基準が記載されている5).慢性期の使用に関してはコンセンサスレポートがあるのみである6).
NPPVが呼吸管理の手段として実際にどの程度使用されているか1999年9月より10月にかけてヨーロッパでのフランス語圏の52のICUで行われた調査では,人工呼吸が必要であった689例中108例(16%)でNPPVが初めに行われ,入院時挿管されていなかった患者の35%であった.低酸素血症性急性呼吸不全14%,肺水腫27%,高炭酸ガス血症性急性呼吸不全の50%に使用され,その後40%の症例がIPPVに移行した.院内肺炎は10%対19%,死亡率は22%対41%で,NPPVのほうが有意に低い.また,NPPVを使用していないICUは8カ所,最大で67%の症例に使用しており(1カ所),施設間較差が生じている.また,昏睡例では使用されていない7).
以下にNPPVが行われるようになった経緯と,現在使用されている機器,今後の方向性について概説する.
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