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特集 急性肺塞栓症の最新の知見
急性肺塞栓症の病態に関する最新の話題
Current Topics Concerning Condition of Acute Pulmonary Embolism
中元 隆明
1
,
天野 裕久
1
,
佐藤 千鶴
1
,
町田 優
1
,
原澤 寛
1
Takaaki Nakamoto
1
,
Hirohisa Amano
1
,
Chizuru Sato
1
,
Suguru Machida
1
,
Hiroshi Harasawa
1
1獨協医科大学心血管・肺内科
1Department of Cardiology and Pneumology, Dokkyo University School of Medicine
pp.673-682
発行日 2005年7月1日
Published Date 2005/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100575
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はじめに
肺塞栓症(PE)は,欧米では虚血性心疾患,脳血管障害と並んで3大血管疾患として捉えられている.日本では従来稀な疾患と考えられてきた.しかし,高齢化社会の到来,食生活の欧米化,診断率の向上といった種々な要因により,わが国においても確実に増加してきており,決して稀な疾患とはいえなくなった.厚生労働省人口動態統計の資料によると,わが国におけるPEによる死亡者数が1988年の591人から1998年の1,655人へと約2.8倍に急増している.急性PEの病態生理の解明も確実に進んでいる.
急性PEの病態の特徴を要約すると次のごとくである.すなわち,1)種々の原因で形成された血栓による肺血管閉塞,神経液性因子あるいは肺動脈圧受容器の反応による肺血管抵抗の増加,2)肺血管閉塞による肺胞性死腔の増大,肺胞性低換気,低換気血流比および右-左シャントの増大による低酸素血症の出現と増大,3)受容器の反射刺激による肺胞性過換気,4)気管支収縮による気道抵抗の増大,そして5)肺水腫,肺出血および表面活性物質の消失による肺のコンプライアンスの減少1),6)肺血行動態の変化に絡んだ病態である.本稿ではこれらのうち病態生理学的特徴を中心に概説する.
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