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診療報酬支払いにおいて物と技術の分離が叫ばれて久しいが,分離されるべき医師技術の評価はわが国ではどうなっているのかを考えてみたい.まずは助手や器械をあまり使わない純粋な医師技術である外来診療を対象にする.検討の基になる資料は3つある.内科系学会社会保険連合(内保連)が協力した2つの調査,厚生労働科学研究(厚科調)と中医協診療報酬専門組織医療技術分科会の外来診療実態調査(中全調),そして米国MedicareのRBRVS(resource based relative value scale)である.厚科調では専門家パネルで“総合負荷”,責任卒数,必要時間を調査した.“総合負荷”とはある患者に対して診療行為を行う際の全ての負荷で,それだけ貰えれば医師が満足する技術料と説明するとわかりやすい.症例の難しさ,つまり技術難易度は責任卒数(診断に責任のとれる卒後年数)とし,時間は専門家が必要と主張する必要時間を調査した.様々な具体的症例で約600問設定して回答してもらった.中全調では約12,000の外来患者の診療実態時間を調査した.
技術料議論の前に技術分類が必要である.米国ではCPT(current procedural terminology)codeがあり,本邦の診療報酬支払コード(例;経皮的冠動脈形成術はK614)に相当する.米国CPTでは初診再診にそれぞれに5段階,合計10のcodeを設定しているのに,本邦では初診と再診の2つしかないので不十分といえる.かといって本邦急性期入院支払い分類(DPC)のように1,800も作るのは非現実的である.そもそも分類は何を基に作られるべきなのか.厚科調では,技術料y(総合負荷)は時間x・責任卒年zの2つで説明できるとされた(y=ax+bz+c).時間は誰にもわかりやすく,中全調では紹介状有初診患者診療時間の中央値は20分と判明した.8分でも35分でも同じ技術分類,つまり同じ報酬の現行制度は改善すべきであろう.一方,難易度を分類にどう反映させるかが難しいが,あまり細かく考えなくてもよいと思う.ちなみにCPTのcoder用手引きでは,初診5段階といっても循環器では2つの見本しかない.
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