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中皮腫をめぐる最近1年間の話題
アスベストによる健康被害が社会的に注目されている.中皮腫はその成因の多くがアスベストと関連している.中皮腫は曝露開始から発症までの潜伏期間が非常に長い.1999~2001年度の3年間に石綿による中皮腫として労災認定された93件の潜伏期間は11.5~54.2年(平均38年)であった1).日本での過去のアスベスト使用量とこの長い潜伏期間から今後日本での中皮腫患者はさらに増加していくと考えられており,統計学的には今後40年で胸膜中皮腫により10万人が死亡するとされる2).ところが,厚生労働省の中皮腫による死亡統計では,2004年の死亡数は953人であったが,2005年には911人と減少した.これは,女性の死亡数の減少による.女性の腹膜中皮腫は,卵巣癌との鑑別が難しく,中皮腫自体が減ったというより,社会的に注目が集まるなか,より厳密な診断が求められるようになり慎重に診断がなされるようになったためと考えられている.いずれにしても,中皮腫患者はその数はわからないが今後増加していくと考えられ,治療効果の改善を含めた症例への対策が求められている.
このような社会的関心が高まるにしたがって,治療や成因を明らかにするための研究にもまた大きな関心が寄せられている.2003年,大規模な第III相試験によってcisplatinと葉酸代謝拮抗剤pemetrexed(商品名Alimta)の併用投与群はcisplatin単独投与群と比べ有意に予後が良いことが確認されて以来3),pemetrexedを中心に中皮腫の治療に関する報告がなされた.また,アスベスト曝露者を経過観察していくうえで有用な手法となることが期待される血清マーカーの報告も興味深い.臨床におけるpositron emission tomo-graphy(PET)や基礎研究におけるマイクロアレイなど近年でてきた手法による検討結果も報告されつつある.ここでは最近1年間の中皮腫に関連する主な論文発表を振り返ってみた.
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