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高血圧治療をめぐる最近1年間の話題〔メタボリックシンドロームと生活習慣の是正〕
近年,わが国では生活様式の欧米化に伴って肥満,脂質代謝異常,耐糖能異常などメタボリックシンドローム(MS)を構成する代謝異常を有する患者が増加し,心血管病リスク上昇との関連が注目されている.1999年にWHOがMSの診断基準を発表して以来,海外でいくつかの診断基準が公表されてきたが,わが国でも2005年にMSの診断基準が発表された1).
本基準では,内臓脂肪蓄積がMSの成因基盤として主要な役割を担っていることが明記されている.内臓脂肪蓄積の評価法として腹囲測定が用いられ,男性85cm以上,女性90cm以上が腹部肥満と診断され,必須項目となっている.これは,内臓脂肪量評価の標準的方法である,臍レベル腹部CT像での内臓脂肪面積100cm2に対応する.内臓脂肪蓄積に加えて,高トリグリセリド血症(150mg/dl以上)かつ/または低HDLコレステロール血症(40mg/dl未満),高血圧(130mmHg以上かつ/または85mmHg以上),空腹時高血糖(110mg/dl以上)の3項目のうち2項目以上あればMSと診断する.
高血圧はMS患者の重要な臨床所見のひとつである.MSの病態は完全には解明されていないが,インスリン抵抗性が重要な背景因子と考えられている.インスリン抵抗性は交感神経活性亢進,レニン-アンジオテンシン系活性亢進,腎尿細管でのNa再吸収亢進など,各種の機序を介して昇圧を招くと推測されている.さらに,インスリン抵抗性自体も動脈硬化を進展させる可能性が示唆されている2).したがって,MSにおける降圧療法はインスリン抵抗性の改善を主体として考えるべきであり,第一に生活習慣の修正を行う.わが国の高血圧治療ガイドライン3)(JSH2004)では生活習慣の修正項目として,1)食塩制限,2)野菜・果物の積極的摂取およびコレステロール・飽和脂肪酸の摂取制限,3)適正体重の維持,4)運動療法,5)アルコール制限,6)禁煙,の6項目を挙げている.また降圧薬のうち,ACE阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)はインスリン抵抗性を改善させる効果を有するが,糖尿病の新規発症抑制効果という観点からはARBに注目が集まっている.
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