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はじめに
循環器領域における医療は,薬剤を用いた治療に加えて,ステントをはじめとした種々の医療機器を用いた治療が行われている.非常に多くの治療薬・治療機器が登場してきたことで,医師の経験だけでは循環器疾患を有している患者に対して最適な治療を選択できなくなってきた.そこで,医師各個人の診療への手助けとなるより客観性のあるエビデンスが求められるようになり,高いレベルのエビデンスとしての大規模比較臨床試験が数多く行われるようになってきた.特に循環器分野での大規模比較試験が欧米で精力的に行われ,循環器分野におけるガイドライン策定などによる治療方針決定に多大な影響を与えてきた.不整脈治療の分野におけるCAST試験や心不全治療に対するPROMISE試験のように,従来良いとされていた治療法の効果を覆した結果が現れてからは,医師の経験に加えて,大規模比較試験の結果が重視されるようになってきた.
ただ,大規模比較試験にも限界があることを認識しておかなければならない.例えば,最高血圧140~160mmHgの人を対象にしたALLHAT大規模研究の結果が,最高血圧180mmHgの症例に対する治療に適応できるかどうかは分からず,一般化可能性という問題がある.かかる問題点は臨床医においてはまだ十分に認識されていないため,大規模研究の対象集団を考慮せずに,エビデンスに基づいた投薬をしていると思い込んで診療を行っているという報告もあり,大規模比較試験の臨床へのトランスレーションする困難さがある.しかし,大規模比較試験はエビデンスレベルが高い手法であることから,かかる手法の限界を理解すると同時に,その結果を臨床にトランスレーションし使いこなすことがこれからの臨床医に求められている.
本稿では,われわれが企画,運営してきた急性心筋梗塞に対する大規模比較試験であるJ-WIND(Japan Working groups of acute myocardial Infarction for the reduction of Necrotic Damage)試験について概説する.
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