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Lung Volume Reduction Surgery(LVRS)の最近1年間の話題
米国において1998年から開始された内科的治療とLVRSとを比較したNational Emphysema Treatment Trial(NETT)は2003年5月に結果が報告された1).すなわち,平均観察期間29カ月の生存率はいずれも11%/人・年の死亡率となり,両群に差は認められないものの,運動機能改善度はLVRS群のほうが術後6,12,24カ月において内科的治療群より良好という結果であった.さらに,サブグループ解析では,気腫性病変部が上葉にあり運動能力が低い症例はLVRSにより明らかな恩恵を受け,逆に病変部が上葉以外で運動機能がよく保たれている症例へのLVRSは明らかな害であることが判明した.この結果を受けて,2003年8月にCenters for Medicare & Medicaid Services(CMS)は,認定された施設において行われる恩恵を受けるタイプへのLVRSについては中止していたLVRSへの医療費の支払いを再開することを決定した2).併せて術式の検討もなされ,正中切開によるLVRSと胸腔鏡下のLVRSとの比較では後者のほうが術後の回復が速く,医療費も少ないことが示された3).
2005年の秋,筆者はMontrealで開催されたACCPのCHEST2005に出席し,9年間のわれわれのLVRS(気腫肺減量手術)の遠隔成績を報告した4).ここでは,LVRSについて多くの論文を発表したGelbの司会のもと,肺気腫に対するインターベンションのパネルデイスカッションが開催されていた.先に述べたNETTのレビューのほか,NETTに参加しなかったCooperらのSt.LouisグループのLVRS長期成績の報告がなされ,加えて,肺気腫に対する新しい試みとして行われ始めた経気道的Lung Volume Reduction(LVR)に関する報告が行われた.冒頭に述べたように,効果が得られる症例群が判明し,医療費の支払いも再開されたので,USAでの2004年以降のLVRSの動向について質問したところ,「理由はわからないが,手術件数は回復しておらず,個人的印象だが,全米で数百件ほどか?」と,予想外の回答があり,急速に手術件数が伸びていた1996年頃とはかけ離れた状況であることが推察された.当初から予想されていたとはいえ,LVRSの効果は減衰し,患者の呼吸状態は以前の状態に戻ることが現実となり,加えて,LVRSに関連して探求すべきことがほぼ出終わった感があることもあってか,研究者の関心は肺気腫への経気道的LVRへと移っている印象を受けた.
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