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呼吸器感染症の診断をめぐる最近1年間の話題
呼吸器感染症は,日常診療の場で頻度も高く重要な疾患である.特に肺炎は,本邦での死亡順位の第4番目を占め,早期診断とそれに基づく適切な治療が望まれている.これまで,呼吸器感染症の起因菌の推定には喀痰のグラム染色が勧奨されてきた.グラム染色は比較的安価で,診断価値も低いものではない.しかし,実際の医療現場においては,染色や顕微鏡検査の備品,あるいは判読の技術などの問題がある.喀痰の採取が困難な症例や,検査前に既に抗生物質を投与されている症例もあり,喀痰塗沫培養などの細菌学的検査での診断率は約50%といわれている.起因菌を分離同定して,分離菌の薬剤感受性を確認することは感染症の治療において有用であり,原則ではあるが,検査結果の判定までに時間がかかることが,早期診断と治療にあたる際に大きな問題である.
最近,種々の迅速診断キットが開発され,その使用も急速に普及しつつある.迅速診断の測定原理としては免疫クロマトグラフィー法,ラテックス凝集反応法,免疫抗体法,酵素免疫法などが用いられている.尿,血清,咽頭ぬぐい液,鼻汁などを検査検体としており,患者からの検体採取に伴う侵襲も少なく,比較的簡便に測定することができる.呼吸器感染症に関するガイドラインとして,日本呼吸器学会から「成人市中肺炎診療の基本的考え方」,「成人院内肺炎診療の基本的考え方」,「成人気道感染症診療の基本的考え方」の3つが発行されている.このなかで「成人市中肺炎の基本的考え方」は「成人市中肺炎診療ガイドライン」として改訂されている.この新ガイドラインのなかでも,肺炎球菌,レジオネラの尿中抗原の迅速診断キットを用いた検査法が,原因菌の検出法として取り上げられている1,2).
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