病理検査こぼれ話
迅速診断
平戸 純子
1
1群馬大学医学部第1病理学教室
pp.24
発行日 1998年6月15日
Published Date 1998/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903446
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病理業務に就いて最も緊張し責任を感じるときは迅速診断に携わるときではないでしょうか.技師の人たちは鏡検に耐える凍結切片をなるべく早く作らなくてはならないし,病理医はふだんのパラフィン包埋標本で慣れ親しんでいる組織像と異なった像を示す標本をなるべく早く診断し,手術室に伝えなければなりません.その結果で手術方針が決められるわけですから責任重大です.誤診をすれば患者さんや臨床の先生に多大な迷惑をかけることになります.大学のようにいろいろな専門を持っ先生方がいれば,走っていってコンサルトすることもできますが,市中病院では病理医が1人で判断しなければならないところがほとんどで,迷いながらもその場で決めなければなりません.筆者の経験からすると,迅速診断の難しさの多くは標本の出来具合いにかかっていると思われます.専門分野の関係で脳腫瘍の迅速診断を行うことが比較的多くありますが,標本の善し悪しで診断のしやすさがまったく異なってしまいます.特にastrocytomaなど線維性基質を有し,結合性の低い腫瘍では凍らせかたによっては網目状の組織となり,見るに耐えない標本となってしまいます(一般に上皮系組織ではきれいな標本を作るのは比較的容易ですが,中枢神経系の病変は難しいようです).良い標本を作るには氷の結晶ができないように素早く組織を凍らせることが最も重要であると考えます.
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