Japanese
English
綜説
わが国における嚥下性肺炎の現状
Current Management of Aspiration Pulmonary Diseases in Japan
佐藤 弘一
1
Koichi Sato
1
1順天堂大学医学部呼吸器内科
1Department of Respiratory Medicine, School of Medicine, Juntendo University
pp.971-978
発行日 2006年9月1日
Published Date 2006/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100456
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はじめに
肺炎はわが国における死亡原因の第4位であり,年間死亡者数は約10万人に達する疾患である.特に高齢者での死因順位の上位を占めている.慢性閉塞性肺疾患(COPD),心疾患,脳血管障害,糖尿病や低栄養などが肺炎の危険因子として知られている.高齢者ではこのような基礎病態を有していることが多く,また加齢による嚥下機能の低下とともに,咳反射,気道線毛運動の低下,口腔内の細菌叢の変化,体液性・細胞性免疫の低下などが肺炎の発症に関与していることが,高齢者での肺炎の死亡が多い理由の一因として考えられている.肺炎の受療率,死亡率をみても,やはり70歳を超えるころから急激に上昇している.なかでも嚥下性肺炎は特に高齢者に多く,高齢者肺炎の原因としてかなりの率を占めると考えられている.
嚥下性肺炎の診断は困難である場合も多い.また治療についても難治性,反復性であることが多く,臨床の場で難渋する症例に遭遇することも稀ではない.最近,嚥下性肺疾患研究会より『嚥下性肺疾患の診断・治療のガイドライン』が提示され,今後の臨床の場での実践と検証が望まれている.
本稿では,嚥下性肺疾患の概念,診断,治療,およびその基盤となる嚥下機能障害の評価,嚥下性肺炎の予防について述べる.
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