巻頭言
肺高血圧症を考える
下川 宏明
1
1東北大学大学院医学系研究科循環器病態学
pp.913
発行日 2006年9月1日
Published Date 2006/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100455
- 有料閲覧
- 文献概要
昨年,東北大学循環器病態学教室(循環器内科)に赴任した.東北大学が関東以北では唯一の肺移植および心臓移植施設に認定されているところから,当科には東北各地や北関東から重症の肺高血圧症や心不全の患者さんが紹介入院されてきている.当科で加療し現在経過観察をしている肺高血圧症の患者さんは約80名に達し,常時20名前後の患者さんが入院されている.
厚生労働省の統計(2005年)によると,原発性肺高血圧症(WHO新分類の特発性肺動脈高血圧症)の患者数は2004年で758名と報告されており,毎年約100名ずつの新規登録がある.脳死肺移植は,世界的にみると,ここ数年,毎年1,700件前後で推移しており,その半数が片肺移植,半数が両肺移植である.わが国では,2000年に初回の脳死肺移植が行われたが,深刻なドナー不足の問題もあり,それ以降,毎年2~6例の脳死肺移植が行われているにすぎない.一方,生体肺移植は,1998年に最初の移植手術が行われ,その後,毎年4~12例の移植手術が行われている.前任地の九州大学で,個人的にも2例の生体肺移植手術症例を経験したが(大阪大学と岡山大学で実施),その効果は劇的であった.
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.