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特集 僧帽弁疾患の新しい治療戦略
虚血性僧帽弁閉鎖不全症の機序
Mechanism of Ischemic Mitral Regurgitation
尾辻 豊
1
,
鄭 忠和
1
,
坂田 隆造
2
Yutaka Otsuji
1
,
Chuwa Tei
1
,
Ryuzo Sakata
2
1鹿児島大学大学院医歯学総合研究科医学系心臓血管内科
2鹿児島大学大学院医歯学総合研究科医学系心臓血管外科
1Department of Cardiovascular Medicine, Kagoshima University Graduate School of Medical and Dental Sciences
2Department of Cardiovascular Surgery, Kagoshima University Graduate School of Medical and Dental Sciences
pp.691-697
発行日 2006年7月1日
Published Date 2006/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100416
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虚血性僧帽弁閉鎖不全症とは
一般に虚血性僧帽弁閉鎖不全症(MR)は虚血性心疾患にみられるMRのなかで弁尖の器質的病変を伴わないもののことであり,乳頭筋断裂およびこの断裂がみられないものの2種類に分けられる.広義の虚血性MRはこの両方を指す.狭義の虚血性MRは乳頭筋断裂がみられないのにMRがあるものだけを指し,広義の虚血性MRの大半を占める.
この狭義の虚血性MRの臨床的意義や機序が,拡張型心筋症にみられる機能性MRと似ているために,両者はしばしば区別されずに使用されている.このようなことから,虚血性心疾患や拡張型心筋症で,弁尖の器質的疾患がなく乳頭筋や腱索断裂がないのに左室心筋の異常により逆流が出現するものを虚血性MRと呼んでいる.この虚血性MRは急性心筋梗塞の20%に,心不全例の50~60%に出現する.虚血性・機能性MRがあると症例の死亡率が倍増し,虚血性・機能性MRは独立した危険因子である1~3).さらに軽度の虚血性・機能性MRも症例の予後を有意に悪化させる1).腱索断裂・弁逸脱やリウマチ性変化を伴う器質的弁尖病変によるMRでは,重症MRのみが症例の予後を悪化させるため手術などの対象となる4).しかし,虚血性MRの場合は軽度であっても予後を悪化させるので,理論的には積極的インターベンションや外科手術の対象となりえる.しかしながら,虚血性MRに対する手術などの適応は現在確立されておらず,今後の検討課題と言える.
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