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Current Opinion
弁膜症の治療―虚血性僧帽弁逆流の治療法の選択
Surgical Therapy for Ischemic Mitral Regurgitation
上野 正裕
1
,
坂田 隆造
1
Masahiro Ueno
1
,
Ryuzo Sakata
1
1鹿児島大学大学院医歯学総合研究科循環器・呼吸器疾患制御学
1Department of Thoracic and Cardiovascular Surgery, Kagoshima University Graduate School of Medical and Dental Sciences
pp.1291-1295
発行日 2004年12月1日
Published Date 2004/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100397
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虚血性僧帽弁逆流をめぐる最近1年間の話題
虚血性僧帽弁逆流(ischemic mitral regurgitation, IMR)は心筋梗塞合併症の予後を決定する重要な因子である1~4).従来,IMRは広範な後下壁梗塞あるいは虚血に伴う後尖側の弁輪拡大や,乳頭筋機能不全のための弁逸脱によるものと理解されてきた.しかしながら,近年の鋭意的なIMRメカニズムの究明は,IMRに対する概念の変化と新たな治療法への取り組みをもたらしている.
1 IMRのメカニズム
Otsujiらは,イヌ心筋虚血モデルで,3Dエコーを用いIMR発生機序を検討した5,6).その結果,IMRは虚血による心室,乳頭筋の収縮不全のみでは起こりえず,心室リモデリングに伴う弁輪,弁下組織の三次元構造の変化で,乳頭筋の偏位や弁尖の心尖方向への牽引(tethering)が起こり,収縮期に前後尖の接合が失われ中心性逆流が生じることを解明した.したがって,従来IMRの原因とされた乳頭筋収縮不全では乳頭筋-弁尖間の距離が延長し,むしろIMRは軽減されるという,一見矛盾する所見が得られることになる7).一方,Timekらは,ヒツジ急性心筋梗塞モデルで,弁輪の中隔・側壁方向(前後径)を短縮することでIMRが消失することを証明した8,9).また,この際前後乳頭筋が弁輪側にわずかに近づきtetheringを若干ながらも軽減していることも発見し,弁輪および弁下組織の位置の修復がIMRのコントロールにつながると結論づけている9).
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