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はじめに
薬剤溶出性ステントdrug eluting stent(DES)の出現で,インターベンショナリストの永年の懸念であった再狭窄が大幅に改善される可能性が生じてきた.これによって,安定狭心症に対する経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)は,IVUSガイド下で行うことで完成されたレベルに到達することとなる.
一方で,冠動脈イベントとして問題となる急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)の多くは狭窄度50%未満の病変から発症することから1~3),その発症を事前に予測することは困難である.剖検症例を用いた検討から,ACSの約7割の症例でプラークの破綻と血栓がみられることが報告されている4,5).そして破綻を来しやすいとされるrupture-prone plaque(thin-cap fibroatheroma)の病理学的特徴として,薄い線維性被膜(<100μm)を有する容積の大きな脂質コア(lipid core)と,線維性被膜周辺の活性化されたマクロファージを中心とした炎症性細胞の集簇が言及されている5~7).また近年,plaque erosionやsuperficial calcified noduleもACSの発症要因として重要視されてきた5,8).以下,ACSの責任病変となるプラークを総じてvulnerable plaqueと呼ぶが9,10),以上からこのvulnerable plaqueの同定には冠動脈壁内の微細構造異常や炎症を捉えることが必要と考えられ,血管内腔のシルエットを評価する冠動脈造影(CAG)では限界がある.
冠動脈病変を非観血的に描出,観察することは循環器内科医が目指す究極のゴールであり,冠動脈狭窄度に関しては,multislice spiral computed tomography(MSCT)やMRIの登場により,CAGと対比して90%に近い感度・特異度を持って評価することが可能なレベルになってきた.しかし,ことvulnerable plaqueの同定に関しては,CTがX線吸収度で,MRIがマクロファージや血栓をターゲットとした特殊なMR造影剤を用い種々の研究が行われているが,冠動脈という解剖学的理由と,その限られた画像分解能から臨床レベルに達していないのが現状である.
また,IVUSや血管内視鏡などの侵襲性画像診断装置も,vulnerable plaqueの同定を目指し,開発・発展過程にあるが,包括的なvulnerable plaqueの同定には限界がある11,12).
ここでは,optical biopsyをコンセプトに開発された通常10μm,最高で1μmの高度画像分解能を有する新しい画像診断装置,optical coherence tomography(OCT)による冠動脈病変の診断,特にvulnerable plaqueの同定に主眼をおいて述べる.
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