Japanese
English
綜説
Rapamycinと循環器疾患
Rapamycin in Cardiovascular Disease
塩井 哲雄
1
,
前田 佳代
1
Tetsuo Shioi
1
,
Kayo Maeda
1
1北里大学医学部内科学
1Department of Internal Medicine and Cardiology, Kitasato University School of Medicine
pp.393-400
発行日 2004年4月1日
Published Date 2004/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100287
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
冠動脈インターベンションは狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患に伴う冠動脈病変に対する重要な血行再建術である.用いられる器具の進歩とともに様々な冠動脈病変に対する適応も拡大してきたが,数カ月から1年のうちに生ずる再狭窄は冠動脈インターベンションの最大の問題であった.最近になりrapamycin(Sirolimus)溶出冠動脈ステントが再狭窄の頻度を劇的に減少させると報告された1,2).これにより冠動脈インターベンション後の再狭窄の問題も解決される可能性があり,虚血性心疾患の管理に大きな変化がもたらされると予想されている.
rapamycinはイースター島(先住民によりRapa Nuiと呼ばれていた)の土壌より分離された放線菌Streptomyces Hygroscopicusにより産生される脂溶性マクロライドである3).もともと抗真菌作用を持つことがわかっていたが,開発の過程で強い免疫抑制作用を持つことがわかった.現在米国では腎臓移植後の免疫抑制薬としての使用が一般に認められており,腎臓以外の臓器移植についても免疫抑制薬としての臨床試験が進められている4).また一方で,腫瘍細胞の増殖抑制効果もあり,抗悪性腫瘍薬としての臨床試験も進められている5).循環器疾患の分野では,再狭窄予防以外にも心臓移植,移植心冠動脈硬化症に対する臨床試験の結果が報告されており,動脈硬化や心不全の治療に向けた基礎研究が進められている.
本稿ではrapamycinの循環器疾患治療への応用について概説したい.
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.