Japanese
English
特集 神経系における液性情報伝達機構
胃液分泌の液性機構と神経性機構
Neurohumoral mechanisms of gastric secretion
松尾 裕
1
,
関 敦子
1
Yutaka MATSUO
1
,
Atsuko SEKI
1
1東京大学医学部第三内科
1The Third Internal Medicine, University of Tokyo, School of Medicine
pp.353-361
発行日 1974年4月10日
Published Date 1974/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903623
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胃底腺領域に存在する壁細胞から塩酸を分泌する機構については,生理学上もっとも重要な一つの研究項目としてとりあげられ,古くから生理学の教科書には三つのphaseに分けて説明されてきた。すなわち,食物の視覚,嗅覚あるいは味覚に対する刺激によって胃液の分泌が亢進してくる段階をcephalic phase(頭相—神経相)と呼び,これは迷走神経を遠心路とする神経性情報伝達機構であり,条件反射として成立する。次に食物が胃に到達し,幽門洞が機械的に伸展したり,蛋白消化物や肉エキスなどに接触すると,胃酸分泌亢進が維持される段階で,gastric phase(胃相)と呼び,これは胃幽門洞粘膜より内分泌されたガストリンを介する液性伝達機構である。ついで食物が十二指腸,小腸上部に到達すると,腸粘膜よりガストリン様物質が内分泌され,胃液分泌が維持される段階でintestinal phase(腸相)と呼ばれ,これも液性伝達機構である。すなわち,胃液分泌は神経性機構と液性機構とが明瞭な形でともに関与している末梢器官ということができる。しかし,この神経性機構と液性機構の相互の機構がきわめて密接な関係を維持していることが明らかにされたのは近年のことである。
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