巻頭言
臨床医学と地域医療
光藤 和明
1
Kazuaki Mitsutou
1
1倉敷中央病院循環器内科
pp.5
発行日 2006年1月1日
Published Date 2006/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100142
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今年のノーベル医学・生理学賞はヘリコバクター・ピロリ菌の発見と胃炎や胃潰瘍における役割の解明によってオーストラリアの二人の研究者に授与された.ノーベル医学・生理学賞のこれまでの105年の歴史をみると,いずれも医療の進歩に著しい寄与をした基礎的研究に贈られていることは言うまでもない.しかし,臨床家の受賞は皆無に近い.そのなかで1956年にWerner ForssmannがAF CournandやDW Richardsとともに心臓カテーテル法に関する発見などに対してノーベル医学・生理学賞を授与されたことは痛快な出来事であった.彼は1929年25歳の時に,自らのbasilic veinから尿道カテーテルを右房まで進めた後にX線室まで歩いてカテーテルの走行を撮影確認した.このことは周囲の批判を受けて10数年以上無視された.受賞したとき彼は泌尿器科の医師として臨床に励んでいたという.
ノーベル賞はその理念からも臨床医が受賞することは難しい.しかし,もし存命していたらMason Sonesは冠動脈造影を始めたことに対して,Andreas GruentzigはPTCAを始めたことに対して授与されたであろうか.FavaroloはACバイパス術を始めたことに対して授与されるであろうか.
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