巻頭言
千里の道も一歩から
砂川 賢二
1
1九州大学大学院医学研究院循環器内科学講座
pp.899
発行日 2005年9月1日
Published Date 2005/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100097
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20世紀後半は分子生物学の時代といわれている.その成果はいち早く医学に導入され,難治性疾患の克服に大きく貢献した.同時期にテクノロジも飛躍的な進歩を遂げた.総合病院の検査室はハイテク機器で埋まっているのは周知の事実である.従来,テクノロジはCT,MRIに代表されるような診断の手段として応用されてきたが,次第に治療機器開発への応用が広がっている.とりわけ昨今のナノテクやITの飛躍的な進歩はハイテクの治療機器への応用を加速している.世界的にもハイテクはポストゲノム時代の医学に大きく貢献をすることが期待されている.
このような時代の潮流を反映して,わが国においても医療機器市場は拡大し続けており,すでに2兆円を超えている.しかしながら,その内訳をみてみると,年々輸出量は減少する反面,輸入量は著しく増加している.とりわけ,この傾向は治療機器において顕著である.従来は診断機器を中心に医療機器を輸出していたわが国が,なぜこのような入超という事態に陥ったのであろうか.理由は明らかである.十分に競争力のある機器開発ができていないことによる.そもそも医療機器は多品種少量生産であり,従来の少品種大量生産のビジネスモデルとは全く異質である.そのためには高度の付加価値が要求される.付加価値を生み出すためには最先端の生命科学・医学とハイテクが必須である.日本は世界的にみてもこれらの条件が揃っている数少ない国の一つである.
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