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編集後記
松本 主之
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1岩手医科大学医学部内科学講座消化器内科消化管分野
pp.921
発行日 2018年5月25日
Published Date 2018/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403201401
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今月号の「胃と腸」誌のテーマは,「小腸出血性疾患の診断と治療─最近の進歩」である.21世紀初頭にカプセル内視鏡とバルーン内視鏡が相次いで開発・承認され,小腸疾患がにわかに注目されるようになった.そして,瞬く間に小腸疾患の臨床に関する新知見が集積され,本誌でも小腸の特集号が組まれる機会が増加した.さらに,小腸内視鏡検査に関するコンセンサスやガイドラインも本邦や欧米で数多く発表されるに至っている.松井の序説と矢野らの主題論文にあるように,小腸疾患の臨床症状として最も頻度の高いものは潜性ないし顕性出血であり,過去に“原因不明の消化管出血(obscure gastrointestinal bleeding ; OGIB)”と呼称された病態の大部分は小腸疾患に起因することが明らかとなった.その結果,小腸出血における種々の診断アルゴリズムが全世界から報告されている.
さて,主題論文を読んでみると,大部分の小腸疾患が網羅的に解説されていることがわかる.すなわち,腫瘍性疾患,炎症性疾患,血管性病変に加えて消化器専門医が知っておくべき希少疾患のほとんどは出血を契機に診断されているのが現実と思われる.なかでも,二村の主題論文では,従来情報量の少なかった小腸疾患の病理所見が詳しく記載されており,必読に値する内容と思われる.一方,主題論文のなかで各論的な内容を取り扱ったものを拝読すると,必ずしも内容が濃いとは言えないものもある.食道,胃,大腸の腫瘍性病変の特集号にみられる“消化管疾患に対する情熱”が本号ではあまり感じられないのである.
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