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編集後記
松本 主之
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1九州大学大学院医学研究院病態機能内科学
pp.1615
発行日 2012年9月25日
Published Date 2012/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403113612
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本誌45巻10号以来のCrohn病(Crohn's disease ; CD)の特集号であり,CD難治例の特徴と治療戦略がテーマとなった.もとよりCDは難治性疾患であるが,欧米では生物学的製剤投与の適応となるdisabling CD(若年発症,狭窄型,初回診断時からのステロイド投与,肛門部病変陽性)を難治性CDとする考えがある.平田先生,松井先生と討議し,本号では,内科的治療に抵抗する高度炎症症例に加えて,種々の合併症を有するCDも難治例に含めた.この点に関しては,松井論文に述べられている.
まず実臨床で問題となるのは,抗TNF-α抗体抵抗例である.抵抗例とは,初回投与に反応しない一次無効と効果が減弱する二次無効に大別される.また,抗TNF-α抗体不耐例も難治性CDの範疇に含めて考えるべきである.長坂論文では,広範な小腸病変と狭窄例が一次ないし二次無効となることが示され,対策まで述べられている.また,本谷論文では,多数例の解析結果から二次無効回避のためにアザチオプリン(azathioprine ; AZA)併用が有効であることが示されている.一方,鈴木論文では,二次無効例において抗インフリキシマブ(infliximab ; IFX)抗体が関与すること,対策としてre-set療法が有効であることが述べられている.これら3論文は,CDを専門的に治療している施設からの報告であり,本邦CDにおける抗TNF-α療法の現状を示したものといえよう.さらに,飯室論文では,抗TNF-α療法による有害事象とその対策について言及されている.いずれも,抗TNF-α抗体を使用する際には必読である.
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