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本号は,薬剤に関連する消化管病変の特集号として企画された.20世紀まではNSAIDs起因性胃・十二指腸潰瘍,および抗菌薬関連大腸炎がこの領域の代表的疾患であったが,その後薬剤起因性の消化管病変は多岐に及ぶことが明らかとなっている.各論文では,多彩な薬剤関連消化管疾患が美麗な画像とともに示されており,消化管疾患を診療する医師にとって大変貴重な情報を提供している.
ダビガトランによる食道炎とプロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor ; PPI)による胃粘膜病変は,最近注目されている疾患と言える.鳥谷論文では前者の臨床像が示されており,本症の頻度が高いこと,症状はGERDと同様であること,中・下部食道の白色膜様物が特徴的であることが読み取れる.治癒過程の内視鏡所見の提示が望まれるところである.一方,伊藤論文では,PPIがparietal cell protrusionの現象を介して種々の胃病変を発揮することが示されている.他の胃病変にもPPIが関与する可能性が示唆される.池澤論文では,NSAIDsの上部消化管粘膜病変の特徴が概説されており,加えてその頻度が減少しつつあることや危険因子として新たな要因が解説されている.また鳥巣論文では,NSAIDsとLDAの小腸・大腸病変について微小病変を中心に分析されている.同論文ではNSAIDs起因性大腸病変の分析に際して他の薬剤の影響を考慮すべきことも示されている.山崎論文ではcollagenous colitisの集積例が詳細に分析されている.2009年の本誌の特集(44巻13号)以来,本症の最大症例数が解析され,PPI非内服例が少なくないこと,急性腹症を呈する症例があることが示されている.同じく本誌で特集(44巻2号)が組まれた疾患である腸間膜静脈硬化症は,近年漢方薬との関係が明らかとなった疾患である.清水論文では本症が漢方薬中止後に改善することが示されており,本症がまさに薬剤関連消化管疾患であることを証明する論文と言えよう.一方,従来からの抗菌薬関連消化管疾患のうち,原田論文において出血性大腸炎の遡及的検討結果が示されている.本症18例中14例でKlebsiella oxytocaが陽性であり,それらのうち5例ではペニシリン耐性菌も検出されている.Klebsiella oxytocaと抗菌薬関連出血性大腸炎の関係を支持する貴重なデータであるが,培養陽性例の診断に寄与する内視鏡所見がなかったことは残念である.最後に,主題症例としてアンジオテンシンII受容体拮抗薬による消化管病変が2例提示されている.大変貴重な症例報告であり,ぜひ一読いただきたい.
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