- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
まことにユニークで役に立つ病理学の本が出版されたものである.2004年5月に第1版が上梓された時から,この日を機して3年半の準備を積み重ねた上での第2版出版となった.その意気や好し,当然のことながら内容は好評であった第1版にも増して充実したものとなっている.消化管臨床医を対象に書かれているだけに,美しい精選された写真が多くてとにかくわかりやすい.写真を見ているだけで楽しくなってくるのは,形態学が得意な人にとってはたまらない贈り物である.のみならず,消化管病理を志す人々にも大変役に立つ専門性を含んだ成書でもある.
本書は10章から構成されている.第1章は切除標本と生検の取り扱いで,極めて実際的に注意事項が記載されている.第2章は大腸SM癌の取り扱いの要点が,かなり専門的な問題も含めて詳しく述べられている.実地に詳しい筆者がかなり力を注いだ部分であることがわかる.第3章に間葉系腫瘍と類似病変の病理アトラスとして,珍しい13症例が提示されている.この辺の構成がいかにも筆者らしくユニークなのである.第4章から第8章までは病理組織診断として口腔,食道,胃,小腸,大腸(肛門管を含む)が順序よく記述されている.口腔病変ならびに肛門管病変についても記載があるのも,いかにも筆者らしくユニークなところである.筆者が序文で自ら述べているように,colitic cancerにはかなり力を注いで記載していることがわかる.著者の幅広い交友関係を反映して,数多くの優れた臨床家の協力を得たおかげで,教育的な症例が多数提示されているのは特筆すべきであろう.掲載されている写真はいずれも症例選択が的確で美しく,この分野の経験に乏しい医師にとっては非常に参考になると思う.全体的にみてもどの写真も質が高く,著者の病理学者としての自負がうかがわれる.何度見直してみても“?”がつく写真は1枚もない.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.