胃と腸ノート
興味ある胃の病変病理解説(8)
下田 忠和
1
,
佐野 量造
1
1国立がんセンター研究所第1組織病理
pp.1038
発行日 1975年8月25日
Published Date 1975/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403112343
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症例10 26歳 男(立正佼成会病院,佐藤氏例)
切除胃の肉眼所見では胃体部前壁に粘膜ヒダの集中を認める.この集中は1ヵ所ではなく,大彎側にも認められ不規則な形の潰瘍の存在を思わせる.この潰瘍の周辺特にoral側とanal側には明瞭なⅡc様陥凹病変を認める.しかし,この陥凹は前壁大彎側では不明瞭となりⅡcとしての連続性は追跡されずリンパ腫が疑われる(Fig. 1).組織学的にはFig. 2に示すように大彎を横切って前後壁に及ぶ不規則なUl-Ⅱの線状潰瘍があり,その周囲にはⅡc様陥凹も含めて粘膜内および粘膜下層にリンパ濾胞の増成を認めた.粘膜内,特にⅡc様陥凹部では固有胃腺は全く消失しリンパ濾胞で置き替っていた.これらのリンパ濾胞の融合像,また胚中心の細胞の核異形は認められず反応性リンパ腫(reactive lymphoma or R. L. H)と診断された.
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