胃と腸ノート
興味ある胃病変の病理解説(9)
下田 忠和
1
,
佐野 量造
1
1国立がんセンター病理部第1組織病理
pp.1184
発行日 1975年9月25日
Published Date 1975/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403112289
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症例12 52歳 男(神奈川成人病センター倉俣英夫氏例)
切除胃では幽門部に粗大な顆粒状隆起が認められる.この隆起は粘膜ひだの上に連珠状に配列している.その表面は僅かに中心陥凹をきたしているが,大部分は平滑である.幽門輪近くの前後壁ではこの隆起は融合あるいは蛇行し,その中央が陥凹したⅡa+Ⅱc様病変が対称性に存在する.これら陥凹部に向ってひだのひきつれがみられ,消化性潰瘍の存在を疑わせる(Fig. 1).この肉眼像からは良悪性の判定は容易ではない.すなわち,Ⅱa+Ⅱcの早期癌または良性のulcero-erosive gastritisを考える.組織学的にはシェーマに示すように前後壁の病変は何れも陥凹部にul-Ⅱの潰瘍を伴い,その辺縁の隆起は幽門腺の過形成よりなる疣状胃炎の像であった.すなわち本例は疣状胃炎に対称性潰瘍を合併した良性のulcero-erosive gastritisである.
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