胃と腸ノート
興味ある胃病変の病理解説(1)
下田 忠和
1
,
佐野 量造
1
1国立がんセンター病理部第1組織病理
pp.36
発行日 1975年1月25日
Published Date 1975/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403112090
- 有料閲覧
- 文献概要
症例1.60歳,男(国立がんセンター例)(0-12843)
切除胃の肉眼像(Fig. 1)は胃角部前壁に肥厚した粘膜ヒダの集中が認められ,また後壁側からも粘膜ヒダの集中がうかがわれる.この後壁側のヒダの先端は明瞭なヤセを示し,小彎側のⅡc型の陥凹粘膜に連続している.しかし通常のⅡc型胃癌と異り幽門側ではその辺縁をふちどるように粘膜がわずかに隆起し,更に前壁では集中する粘膜ヒダがくびれを有する粘膜隆起すなわちⅡaの像に移行している.また一部では集中する粘膜ヒダの先端でヒダの融合するような所見を示している.この病変は潰瘍を有するⅡc型であるが,他方ではⅡaの隆起を示した早期胃癌で我々の提唱した早期胃癌の特殊型としてのⅡc+Ⅱa型に相当する.この肉眼所見をシェーマに示すとFig. 2のようになる.太い部分で描いた部分がⅡaに相当する.癌の拡がりは9.0×4.5cmである.その割面は2個のUl-Ⅱを中心として陥凹性病変(Ⅱc),その幽門側はⅡaの隆起を示している(Fig. 3).組織学的には大部分mの粘膜内癌で極くわずかに粘膜下へ浸潤した早期癌である.組織像はⅡcの陥凹部は分化した腺管腺癌で,これが漸次的にⅡa部の乳頭性腺管腺癌の像に移行し両者の間に相違はない(Fig. 4).リンパ節転移は認められなかった(0/43).
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.