胃と腸ノート
重複胃癌(2)
三宅 政房
1,2
,
安井 昭
1,2
1順天堂大学消化器外科
2越谷市立病院消化器外科
pp.1218
発行日 1975年9月25日
Published Date 1975/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403112313
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主,副病巣の位置関係と診断 副病巣が口側(oral)のものが19例中10例53%とやや優位であるが,私ども1)の以前の発表では副病巣が口側にあるものが4例中1例25%で,主病巣が副病巣の口側にあるものが優位であると報告したが,症例数が増すにしたがって上述のような分布になった.したがってこの傾向は私ども外科医にとって胃切除という責任が負わされており,多いに問題となるところである.したがってより一層の術前診断の的確さが要求される2).図1はAntrumを占居するBor. Ⅱ型癌のoral(矢印)に存在するⅡb(m)型のminute cancerの切除標本であるが,この副病巣は組織検索によって始めて重複癌を発見されたもので,肉眼視では全く不可能であった.このような次第で私どもの症例でも術前の存在診断がついていたものを含めても60%もの高率で見逃されていたことは冷汗の出る思いである.
図2は三重複癌(三病巣ともかなり接近して位置しているが組織学的検索によって互に独立した癌巣であることを確認している)の症例であるが,このような例23病巣中,深達度がmのもの12個(52%),smのもの9個(39%)であった.これらの副病巣の深達度はm(粘膜癌)で,しかもそのひろがりが0.52cm以下の微小癌(minute cancer)であることが多い傾向にある.高度な診断力が要求される.
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